黒澤清監督の「カリスマ」の顛末と木の正体を考察してみました。
籠城犯の説得に失敗し、犯人も人質も死なせてしまった藪池刑事は、“世界の法則を回復せよ”という、犯人が残した謎めいたメッセージに導かれるように、ある奇妙な森を訪れる。そこには強烈な毒素を周囲にまき散らす、“カリスマ”と呼ばれる1本の老木が生えていて、さまざまな人々がそれをめぐって対立を繰り広げていた。藪池は森の植物の研究をする美津子とその妹の千鶴、カリスマを守ろうとする青年・桐山らと知り合うが……。(公式サイトより引用)
映画「カリスマ」作品情報、あらすじ、登場人物情報はこちら
※以降はネタバレを含みますので、本編を視聴した後で読むことをおススメします。
カリスマに対する登場人物たちの考え方
- 薮池五郎(役所広司)
”カリスマ”を巡る抗争を一歩離れたところから見ながら、木と森の両方を助ける方法を考える。木と森のどちらかが大事ということではなく、木の1本1本の集まり、それが森であるという考え方。
- 桐山直人(池内博之)
自然は弱肉強食。例え森全体が枯れて一本の木だけが残ったとしても、それも自然の在りよう、「森(世界)の法則」だと考えている。
- 神保美津子(風吹ジュン)
特別な1本の木よりも森全体の生態系を守ることが大事だと考えている。”カリスマ”と森の両方が生きる方法は無いと断言。森が死んでいく原因が”カリスマ”にあると考えており、池に毒をまき、森全体を一度殺すことで生態系を元に戻そうとしている。生きる力と殺す力は同じことだと藪池に教える。
- 神保千鶴(洞口依子)
美津子の妹。大事なのは森の外で、木も森もどうでもよいと考えている。
- 中曽根敏(大杉漣)
自治体から依頼され、森が枯れていくことを止めにきた森林キーパー。集団で乗り込んで行き”カリスマ”を強制撤去しようとする。
- 坪井達夫(大鷹明良)
市の環境保全課の職員。森が枯れるのを止めないと森の仕事から解放されないという理由で中曽根に保全を依頼する。
- 猫島(松重豊)
”カリスマ”に魅了され独り占めしようとする。
※下ページからはネタバレを含みますので、本編を視聴した後で読むことをおススメします。
”カリスマ”の顛末
猫島の登場で、物語が一気に物々しくなり、”カリスマ”の武力行使での奪い合いが勃発。銃撃戦の最中に突然現れた神保姉妹がカリスマを奪い、焼いてしまう。
落胆する桐山、安堵する神保教授、オオワライタケで打ち上げをする中曽根・坪井。その様子を冷ややかに見ている猫島。そんな中、藪池が2本目の”カリスマ”を見つけたと桐山、神保教授に伝える。
後半、”カリスマ”が焼かれたことで、”カリスマ”を巡って争っていた人々の争いに決着が着いた…はずだったのだが、藪池が2本目の”カリスマ”があると言い出すことで、物語が更に混沌としていく。
2本目の”カリスマ”とは?
藪池が見つけてきた2本目の”カリスマ”はただの巨大な老木だった。藪池にとっては、その老木が真に”カリスマ”かどうかに意味は無くなっており、世話を始める。桐山は老木を”カリスマ”だとは認められず森を出る覚悟を決める。神保教授は老木が”カリスマ”ではないことを理解しているのに、執拗に2本目の”カリスマ”も破壊しようとこだわり、猫島は老木を新しい”カリスマ”として自分だけのものにしようとする。神保妹は混乱に乗じて猫島が持ってきた”カリスマ”の手付金1,000万円を持って逃走し、中曽根・坪井が追う。
黒沢清「カリスマ」再鑑賞。
— グラビトン・ボルト(侵略者) (@adnojifhinfo) February 27, 2022
やっぱりこの作家の映画の中でも一番訳がわからないんだよな・・・。
池内博之と初めて遭遇するホテル跡の闇とか、異様に尖った細部に満ちてるから興味がなくなることはない訳だが。 pic.twitter.com/YSmIxYIasx
エンディングの謎
”カリスマ”を爆破し、森を去る藪池。刑事部長と携帯で通話する目線の先には燃える街が見えるというエンディング。
木=個人、森=社会であるということで登場人物達の社会に対する個人の在り方が語られるが、
劇中に何度か出てくる「世界の法則を回復せよ」というのは、”カリスマ”により保たれていた社会秩序が、崩壊してしまったことを指すんだと思いました。
中曽根の部下たちが、”カリスマ”が燃えたことで殺人集団になってしまっていたこと、秩序の代表だった桐山を受け入れなかったこと、貨幣になびかなかったこともそういう事だと思います。
視聴者の声
カリスマ
— にこちゅん丸🍑休 (@nicoch_9) November 24, 2020
こういうの大好き!深読み案件!
日常風景の中で唐突に始まる殺人シーン大好物で痺れる!こういう見せ方超CUREっぽいって思ったら同じ黒澤清監督だったのでほほぅとなった
ハンマー撲殺シーンと刀でずぶっとやるとこマジ怖い。ああなったら逃げられないなぁ😢
ラスト何!?不気味だ…解説求… pic.twitter.com/Q747iq5zsT
黒澤清、カリスマも叫びもCUREも回路も、ゆっくりゆっくり穏やかに世界が誰かの悪意と呼ぶには余りにも透明な祈りによって滅びていく様な話なので好きなんだけど、私が好きな人は大抵ミッシェルもキリトもそういう終わりを歌うので、そういうのが好きなんですわ……
— 烏瓜 (@yu3ha) January 6, 2019
刑事(役所広司)は、山中で大杉漣杉が率いる森林キーパーたちに遭う(後に松重豊が雇われる。)
— 金泉2021 (@gold_onsen) April 29, 2022
生命力の強い木『カリスマ』は、亡き医師が植えた木で、医院元職員(池内博之)が、伐採したい森林キーパーたちと対立しつつ守っている。
別途、植物学者(風吹ジュン)とその妹が、思惑あって森を見守っている。 pic.twitter.com/8K3Kgyl3ra
黒澤清まつり!
— 月収50円 (@50yen2525) June 29, 2016
映画『カリスマ』を見る
まじめな刑事がある森でカリスマと呼ばれる木とそれを巡る人々の生き方に触れ、自然の真理や生きる事と殺す事を悟る話
今ある自由は隷属の上に成り立ってるもので、自然のような「在るがまま」を人間が体現したとき訪れる恐怖
『カリスマ』面白いことは確実なのだが、自分でも何が面白いのか分からないし、内容も死ぬほど意味不明。だけど面白い。役所広司、大杉漣、松重豊など素晴らしいキャストによる暗い哲学的な映画。
— たつ (@Miya380415) August 4, 2022
考察終わり次第感想出すと思います
「世界の法則を回復せよ」 pic.twitter.com/3g0PoUlvIy
役所広司演ずる薮池五郎と『カリスマ』を巡る人々。
— waos systems (@waos_systems) January 2, 2020
「お前一体何を したんだ。」・・まったくだ。#カリスマ#黒沢清#洞口依子#役所広司#風吹ジュン#大杉漣 pic.twitter.com/J7vyMYc1MD
『 カリスマ 』1999年 世界中が終末論で騒いで月刊ムーが売れていたオカルトな時代に、監督が描いた 世界の終わり。大杉漣が狂ったり、シュールな長回しのドタバタ劇があったり 見たことない演出が新鮮で始終ほくそ笑んでました。それからが黒沢清の始まりでした。
— 古書と古本タケシマ文庫 /熊本の本の買取/熊本の古本屋 (@takeshimabunko) March 17, 2019
#あなたの黒沢清はどこからですか pic.twitter.com/AavmEqyYEJ
作品イメージ
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関連情報
出典:公式サイト
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